(イラスト:木下綾乃)
「日頃、あまり運動していない」という人にこそおすすめしたいフラット登山。発案者の佐々木俊尚さんが、初心者向けに安全な楽しみ方を指南します(構成:村瀬素子)

山登りと散歩のいいとこどり

山に登りたい気持ちはあるものの、「体力に自信がない」「膝が心配」「装備が大変そう」と、一歩を踏み出せない方は多いのではないでしょうか。私が提唱する「フラット登山」は、頂上を目指して山道をひたすら歩く、といった登山の固定観念を取り払い、とにかく「気持ちよく歩いて、自然を楽しむ」、新しい登山スタイルです。

フラットという言葉には、主に2つの意味があります。1つは平坦な道や広い大地も楽しんで歩いてみようという意味で、山頂に立つことを目的としません。たしかに、ハァハァ言いながら険しい道を登って頂上に到達すれば達成感を得られるし、見晴らしもいい。

でも、頂上に行かなくても、山裾を歩いているだけで気持ちがいいし、素晴らしい景色にはいくらでも出合えます。大地を踏みしめる瞬間、瞬間を五感で味わい楽しむのが、フラット登山なのです。

もう1つは、気軽に「ふらっと」という意味。標高数百メートルの低山や里山に、散歩気分でふらっと出かける。そんなイメージです。ただ、散歩ほどゆるく短い歩行ではなく、山以外にも湿原、草原など広いエリアが対象に。歩くコースも山道、遊歩道、あぜ道、磯の海岸など変化に富んでいます。

途中で道の脇のお地蔵さんにお参りしたり、無人販売所で地元の野菜を買ったりと寄り道しながら、山だけでなく自然豊かな田舎、町なかの公園なども全部ひっくるめて《歩く》ことを楽しむのが特徴です。