人が相手に執着するとき

また、人が相手に執着するときは、「自分が相手を失ったらどうしよう」という不安が常に心の中にあります。それゆえ、相手を常に見張っていなければいけません。そして、不安から逃れるために相手に干渉していきます。

やっかいなことに、執着する側の人間は、それを「執着」だと認めようとはしません。もし自分が「執着」していることを認めると、自分はただの「ストーカー」であり、「毒親」であることを認めなければなりません。そんなことを認められるはずもなく、自分を守るために「これは愛だ」とうそぶきます。一種の防衛機制が働くのです。

ゆえに、執着している人間は、「これは愛だ」と思うことにしています。もし、そうだとしたら、上手くいかなかったら悪いのは相手です。自分の「愛」を受け入れない相手や子供が悪いのです。

それゆえ、執着する人間は、思い通りにいかないと相手に怒りを感じます。何が何でも、自分の思う通りにさせたいと思います。その理由は自分が相手を「愛」しているからなので、ひたすらエスカレートします。

そして、見張るだけでは飽き足らず、相手を攻撃し、支配しようとします。あくまで悪いのは相手ですから、自分の思い通りにしようとします。相手を正しい道に引き戻さなければいけないのです。なぜなら自分は相手を「愛」していると思っているからです。ただ現実には、相手は恐怖を覚え、逃げようとします。するとますます、ストーカーも毒親も相手を支配しようとします。この構造が続く限り、「執着」はどんどんひどくなります。

ここまで、ストーカーや毒親の例を挙げつつ、「愛もどき」と「愛」の違いについて見てきました。その違いは大きく二つ。一つは、「愛もどき」は一方通行であり、「愛」は相互性があるということです。そして、もう一つは「愛もどき」は執着であるが、「愛」は執着ではないということです。

※本稿は、『愛の処方箋』(光文社)の一部を再編集したものです。

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