代謝が上がって寝つきが良くなる

酸素を無駄遣いしないために私が提唱しているのが、横隔膜をしっかり動かす「シン呼吸」。《シン》には「深」と「真」という意味が含まれ、息を深く吐き切るのがポイントです。基本は文字通り、(1) 呼(吐く)、(2) 吸(吸う)の順番で。肺の空気を出し切れば、吸おうと意識せずとも新鮮な空気が肺に入ってきます。

肺には筋肉がないため、自分で動かすことができません。では何が動かしているかというと、肺を覆う胸郭のまわりにある約20種類の呼吸筋。そのなかでも重要な働きをしているのが、肺の下に位置する横隔膜と、肋骨の間にある肋間筋です。この2つの収縮運動で肺を広げたり縮めたりし、空気を取り込みます。

とくに横隔膜は、深く呼吸をすれば約10cmも上下に動くため、まわりの呼吸筋も同時に動いて効率的な酸素・二酸化炭素の交換が可能に。さらに横隔膜のまわりに集まっている自律神経を刺激し、副交感神経を優位にすることができるのです。

良い呼吸の目安は、1回10秒。7秒吐いて、3秒ほど自然に空気が入ってくるのが理想です。まずは、息を長く強く吐き出す癖をつける「ガス抜き呼吸」にトライ。固まりがちな肩甲骨まわりもストレッチで柔らかくほぐし、呼吸筋や胸郭の可動域を広げていきましょう。

1ヵ月ほどで心拍数や血圧が安定し、代謝が上がって手足が温まる、寝つきが良くなるといった効果を感じられるはず。横隔膜が動いて腸が刺激されるため、便秘の解消にも繋がります。鼻呼吸が習慣になれば、風邪などの感染症予防にも。

さらに、呼吸は感情と連動していることも研究でわかっています。副交感神経が優位になることで、心の緊張や興奮が抑制され、リラックス状態に。イライラや不安を感じた時には、シン呼吸を意識してください。

次の記事は実践篇です。テレビを見ている時、信号を待っている時、仕事や家事の合間などに行うのがおすすめ。健やかな呼吸を身につけ、心身の不調を改善していきましょう。

実践編につづく

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