私は、ハアハア呼吸が増えている背景には、「呼吸」への誤解も大きく影響していると考えています。たとえば深呼吸をする時、「吸って、吐いて」という掛け声の順番で行う人がほとんどではないでしょうか。しかし、それは間違いなのです。
先に大きく息を吸った場合、吐く時に肺の中の空気を出し切ることができず、約25%は「残気」として肺に残ります。そのため肺のスペースが狭くなり、次に息を吸おうとしても、十分な量の酸素を取り込めません。すると、すぐ次の息が吸いたくなって浅い呼吸を繰り返し、常に低酸素状態という悪循環に陥ります。
また、理科の授業で「生き物は酸素を吸って二酸化炭素を吐き出す」と習ったためか、二酸化炭素は体に不要なゴミだと思われがちですが、それも誤解。二酸化炭素は人間が生きていくうえで必要不可欠な存在です。
外気から取り込んだ酸素は、ヘモグロビンと結合して各組織の細胞まで運ばれます。しかし、二酸化炭素の量が十分にないと、ヘモグロビンは結合した酸素を切り離して細胞に引き渡すことができません。つまり二酸化炭素は、全身の末端にある毛細血管の隅々まで酸素を行きわたらせる、陰の立役者。
浅く速い呼吸を繰り返して血中の二酸化炭素が失われすぎると、細胞に届く酸素量も減ってしまいます。正しい呼吸がいかに重要か、おわかりいただけたでしょうか。