人前で走ると笑われている気が…

それ以来私は、人前で走るのが怖くなった。体育の授業や運動会はもとより、遅刻しそうな時や青信号が点滅している時など、日常のちょっとした場面で走るのも怖くなった。

誰も見ていなくても、祖父母に笑われているような気がする。すれ違う見知らぬ人にも嘲笑されるのではないかと、あれから二十年以上が経った今でも、ジョギングをしながら思う。

こうしてあらゆるトラウマを植え付けられたせいで、私は運動を忌み嫌うようになった。

休み時間のドッジボールや鬼ごっこなども苦痛でしかないので極力避けていたし、家族と身体を動かす遊びをすることもほとんどなかった。長期休みに田舎の祖父母の家に集まった従兄弟たちが庭で元気よく遊んでいる時も、私だけ居間で静かに過ごしていた。

『虚弱に生きる』(著:絶対に終電を逃さない女/扶桑社)