「eスポーツの選手になるかも」と子どもが言い出したら
「eスポーツの選手になるから、利用時間なんて制限する必要ない」と言い出す子どもは、実は少なくありません。eスポーツとは、エレクトロニック・スポーツの略で、広義には、電子機器を用いて行う娯楽、競技、スポーツ全般を指す言葉です。コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技としてとらえる際の名称とされます。
2024年7月、オリンピックを主催する国際オリンピック委員会(IOC)は、eスポーツの国際大会「オリンピック・eスポーツ・ゲームズ」を開催することを決定しました。
eスポーツは、正式にスポーツ競技として認められたのです。
2027年には、サウジアラビアで初のeスポーツオリンピックが開催される予定です。
当然、大会などで賞金を得たり、プロチームや企業に所属したり、スポンサーを抱えたりするプロゲーマー、eスポーツプレイヤーもいます。
もちろん、ゲーム好きの子ども達にとっては憧れの存在です。時には、ゲームばかりやっていることの言い訳に使われることもあり、私が知っている限り、一クラスに最低一人くらいは、「将来の夢はプロゲーマー」という子がいるように感じています。「たくさんゲームをしないとプロになれない。プロになるためにたくさんゲームをしているんだ」と言われたら、どう判断すればいいでしょうか。職業に貴賤はないという考え方もあり、子どもが本気なら夢を応援したいと思う保護者の方も多いでしょう。
ただし、現実としてプロゲーマーの道が決して平坦ではないことも、伝える必要があります。たとえば、人気バトルロイヤルゲーム『Apex Legends』のプロプレイヤー「TeQ」選手は(*1)、約4年のキャリアを通じて得た収入は7万ドル(約1、000万円)だったことを明かしています。
これは過去在籍したチームからの給与、大会の賞金、Twitch配信での収益を含むものです。月に平均するとおよそ1、500ドル(約23万円/2024年4月時点のレートで換算)に過ぎず、これは米国では貧困レベルの収入です。「TeQ」選手は本業のエンジニアも続けており、「エンジニアをやめなくてよかった」「学業や仕事は続けた方がいい」と語っています。
人気バトルロイヤルゲーム『フォートナイト』の世界大会「Fortnite World Cup」参加のプロゲーマーたちも、口々に「勉強することが大事。プロゲーマーは運次第、なれない時に取り返しがつかなくなるので、勉強は大切」と語っています。
ゲームだけをしていてもそもそもプロゲーマーになれるかどうかわからないこと、トップレベルのプロプレイヤーでも十分な収入を得られないことを考えると、学業を捨てることはあり得ません。将来的にプロプレイヤーになるとしても、やはり教育は必要だし、健康な肉体や思考力も必要なのです。
プロプレイヤーやゲームを作る会社の人たちも、ゲームだけをすることを推奨している人はいません。勉強をすることで、様々な知識が身につき、アイデアや発想の幅が広がります。尊敬するプロゲーマーたちの言葉なら、子ども達も耳を傾けるかもしれません。ぜひ、プロゲーマーの言葉を伝えてあげてください。
これは、YouTuberやインスタグラマー、ティックトッカーになりたい場合でもほぼ同様です。たとえばYouTuberの収入(*2)は、大手事務所所属でも平均月収6万円程度となります。YouTuberになる夢は全く否定しませんが、学業を捨てて専業にするのはあまりにリスクが高いことは教えてあげるといいかもしれません。
*1 Okano. “「学業や仕事は続けた方が良い」あるプロゲーマーが約4年間の収入を明かし警鐘鳴らす…成功を逃したあとに「追いつく」ことは難しい”。INSIDE. 2024-04-17
https://www.inside-games.jp/article/2024/04/17/154604.html(参照2025-03-25)
*2 高橋暁子。“大手事務所所属でも平均月収6万円…子どもたちが知らない「普通のYouTuber」の厳しい懐事情”。 PRESIDENT Online. 2022-03-20.
https://president.jp/articles/-/55637(参照2025-03-25)
※本稿は、『スマホで受験に失敗する子どもたち』(講談社)の一部を再編集したものです。
『スマホで受験に失敗する子どもたち』(著:高橋暁子/講談社)
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