4階の奥にある部屋には、絶対に人を泊めてはいけない
支配人と従業員がヒソヒソと話し始めたので、須藤さんはいったいどういうことなのか尋ねた。
「4階の奥にある部屋には、絶対に人を泊めてはいけないと言われているんです。定期的に清掃はしているのですが、空室にしておかないといけない。私がここで働き始めた時に、前任者からそう言われました。おそらくその前任者も、そのルールを引き継いできたんだと思います」
須藤さんには、意味がわからなかった。
空室にしておかないといけないとは、どういうことだろうか。
「すみません。理由を教えてくれますか?」
「私も詳しくはわからないんです。ただ……」
――あの部屋には、何かがいるらしいんですよ。
従業員の表情は硬く、ふざけているとは思えない。
「あの部屋は、絶対に触れちゃいけない部屋なんです」
従業員が語り始めたのは、かつてそのホテルの支配人だった後藤という人物の話である。