とても人が住んでいるようには思えない様相
1週間後、除霊の当日。
大村さんは指定された住所――山間の集落にある老女が住む家の前に着いた。
その家は、集落から少し外れた山裾に建っている。近隣にいくつか住居があるが、静かで人影はない。町からも離れた場所で閑散としていた。
時刻は夕刻。本来なら依頼をしてきた男性も来る予定であり、彼の都合で夕方に最寄り駅で待ち合わせをするという話だったのだが、直前になり「急用があって行けない」と連絡があった。仕方なしに大村さんは、一人でその家まで辿り着いたという次第である。
現場に着いた大村さんは、その場に立ち尽くして息を呑んだ。
「これは一筋縄ではいかないな……」
その家の佇まいを目にした時、思わず大村さんはそう呟いた。
枯れ木に囲まれた敷地に立つ木造家屋。塀に囲われており、錆びついた門をくぐった先の敷地の中は、膝ほどの高さまで雑草が伸びていた。所々に茶色くなったゴミ袋や鉄屑が散乱している。とても人が住んでいるようには思えない様相だった。
時刻は昼から夜へと移ろいつつある。
薄暗い景色の中で、その家は異様な威圧感を放っていたという。
ガサガサと雑草を踏み分けて大村さんは玄関へと向かった。
呼び鈴は鳴らない。壊れているのだろう。
「すみません。御親族の方から御祈祷の依頼を受けて参りました、大村と申します」
返事はなかった。
「すみません。どなたかいらっしゃいますか」
何度か声を掛けた時である。玄関の奥から「どうぞ」と低い声がした。