凄まじい悪臭
大村さんは意を決して、玄関の扉を開けた。
「失礼します」
扉が軋む音がする。開いた扉の向こうは暗い。外から差し込む光の中に、霧のような埃が舞っている。
「うっ!」
凄まじい悪臭に鼻腔の奥を殴られたような衝撃を覚えた。
「これは、酷い……」
内臓を掻き回されるような吐き気に襲われ、大村さんは思わず口に手を当てた。
家の中は、床も見えないほどに大量のゴミで埋め尽くされている。蓄積されたゴミ袋やボロ切れの山が、廊下の奥まで続いていた。おそらく電気は止められているのだろう。廊下にある窓から淡い光が滲んでいるが、家の中は暗かった。
廊下の奥に、背を曲げた老婆が立っている。
顔は影になって見えないが、こちらをじっと見ている様子だった。
「御親族の方から御祈祷の依頼を受けて参りました。大村と申します」
大村さんがあらためて挨拶をすると、老婆はしゃがれた声で「ああ、そうですか」と言った。そして老婆はゆっくりと廊下の左側にある襖を指差し、
「それでしたら、主人の仏壇に御経でもあげてください」
と言った。
――この家には耐えられない。とにかく早く除霊して帰ろう。
大村さんは「失礼します」と言い、履き物を脱いで廊下へと上がった。
ブーンと大量の蝿が舞う音がした。足を動かすたびにガサガサとゴミ袋の音が響く。
ぐちゃ……、ぐちゃ……。と、足の裏に湿った柔らかい物体の感触があった。おそらく床には濡れた衣類か雑巾のようなものが散乱しているのだろう。
カサカサ……と、足元に大きな虫が這い回る音が聞こえた。
おそらく常人なら耐えられないだろう。大村さんは、荒行の時に比べれば――と自らを鼓舞し、気を確かに保ちながら歩みを進めた。
廊下を進むと、右側に食卓と台所が見えた。換気扇の隙間から、微かな光が差し込んでいる。調理台の上には湿った雑巾が乱雑に置かれていた。流し台には大量の汚れた食器が山積みになっており、ガスコンロには錆びついた寸胴鍋が置かれている。鍋の中には、何かの肉塊が溢れんばかりに入っていた。
大村さんは目を逸らし、反対側にある襖を開けた。