脚本家の仕事はドラマの土台作り
残間 今、みんなで作るとおっしゃったけれど、大石さんは脚本の中のセリフとセリフの合間に、登場人物の心情や動作や場面の状況を記述する「ト書き」はあまりお書きにならないほうですか? 鍋の中の具材まで書く脚本家がいると聞きますけれど。
大石 ト書きは少ない方だと思います。作品は私一人のものではないですから、監督や役者に委ねる部分を残しておいた方がいいと思って。
残間 脚本というのは脚と書くくらいでドラマの土台ですよね。そこはきっちりと守るけれど、その先は委ねるということですね?
大石 守るというか、家だってまずは土台がきちんとしていないと崩れてしまうわけで、その土台を作るのが台本です。作品のテーマや哲学を打ち出すのは私だ、という気概みたいなものはありますね。
残間 そこへ監督とか役者が絡んでくると思った通りにはいかないということって多いんですか?
大石 多いです。8割方、私のイメージとは違うものに仕上がって来ます。毎度びっくりしますが、中園さんはどうですか?
中園 でも「幸せなすれ違い」であることも多くて、監督は私が作ったセリフをこういう流れの中で役者に言わせるのか、役者はこういう表情で言うのか、なるほどねぇ~みたいなことが多いです。
残間 そうか、役者の表情ひとつでセリフが違う意味合いを持つということもありますね。
中園 みんなで作ることの楽しさは化学反応が起こることだと思うんです。
大石 同感です。
残間 なるほどね。するとどういう作品に仕上がっても文句はないと。
大石 私の書いた脚本を何十倍も素晴らしいものにしてくれたと感じる時もあるし、なんでこうなっちゃうのかと、許しがたく思う時もあります。仕上がりを待つスリルはなかなかですよ。
残間 許しがたいと思ったら意見するんですか?
大石 しないです。脚本を書くところまでが私の仕事。そこからどう料理されるかに関しては自分の領分ではないので、余程のことがない限りは口出ししません。