人々がどんどん保守的になっている
残間 言葉の問題についても伺いたいのですが、言葉に対して敏感な世の中になって、言葉を紡ぐ仕事をしている脚本家としてやりづらさを感じますか?
中園 たとえば『あんぱん』の最初の頃に、のぶが「気をつけろボケ」と言うシーンがあって、それだけで「ヒロインにあんな乱暴なセリフを言わせるようなドラマは観たくない」という声があったということを聞きました。でも「ごめんあそばせ」みたいなヒロインばかりではつまらないし、セリフはその人物のキャラクターを表すものなので、こちらも妥協できません。SNSに感想を書く人たちの言い様のほうがよっぽど乱暴で、匿名による言葉狩りみたいな現象は怖いと思います。
大石 ヒロインは健気でなければならないと頭がかたまっている方が多いなというのは感じますね。
残間 保守的な視聴者が多いのですね。
中園 どんどん保守的になっていると思います。
残間 作る側としてはSNSであれこれダメ出しをされるとビクつきませんか?
中園 私はSNSはチェックしないようにしているんですけど、わざわざ電話をしてきてこんなことを言われているぞとか教えてくれちゃう親戚とかがいて、どうしても耳に入って来ちゃうんですよ。
大石 言葉狩りで言うと「頭がおかしいんじゃないの?」というセリフもダメなんですよ、最近。
残間 友達との会話なんかで普通に言ってますけどねぇ。
大石 でも精神的な疾患のある方もいるので。だから「おかしいんじゃないの?」はいいんです。「頭が」というのがいけないらしいです。
残間 ああ、そうか。でも「おかしいんじゃないの?」というだけでは伝えきれない感情がありますよね。
大石 表現が甘くなってしまうのは、無念ですね。伝えたいことも伝わらなくなりますから。言葉狩りというのは恐ろしいです。
残間 そういうことについて制作スタッフと語り合わないんですか?
中園 そんな時間的な余裕はないですね。それこそ働き方改革のしわ寄せもあって。
大石 戦っても、それが嫌なら辞めなさいということになっちゃいますし。
残間 辞める覚悟がないと戦えないということなんですね。
大石 私は戦って来た方だと思いますけど、中園さんがおっしゃったように連ドラの制作現場は、本当に時間に追われていて、根本的なことを議論している時間はないのが現実です。言葉狩りについてはプロデューサーが戦うしかないと思いますが、そういう勇気と覚悟のある人もなかなかいないです。