愛情が憎しみに変わる理由
人と関わることによって起こるさみしさには、「オキシトシン」という脳内ホルモンが関係していると考えられます。
「愛情ホルモン」や「絆ホルモン」とも呼ばれるオキシトシンは、脳に愛情を感じさせ、人間同士の絆をつくるホルモンといわれています。
そのオキシトシンがもっとも分泌されるのは、セックスするときと分娩時なのですが、誰かと同じ空間に長い時間一緒にいるだけでも、オキシトシンの濃度は高まるとされています。
また、互いに目を合わせて話をしたり、スキンシップをとったりするときにも、オキシトシンが分泌されることがあきらかになっています。
オキシトシンは、相手に親近感を持たせたり愛着を感じさせたりする働きを持ち、家族や仲間とのあいだに絆や愛情をもたらすため、人間関係をつくるうえで良い働きをします。
一方で、オキシトシンの濃度が高まると、相手が愛情や信頼を裏切るような行為をした場合に許すことができず、逆に憎しみや怒り、嫉妬といった感情を生じさせてしまうということもあります。
例えば夫婦関係において、相手が自分の気持ちを理解してくれないと感じるとき、それが他人ならさほど気にならないのに、ひどくさみしく、ときに強い怒りを感じてしまうのはそのためだと考えられます。
オキシトシンの働きにより、夫や妻、子どもといった相手に強い愛情を感じるわけですが、その働きが行き過ぎると、相手が「自分とは違う人格を持つ人」で「決して自分の思いどおりにはならない」というあたりまえのことさえ、わからなくなってしまうというわけです。
※本稿は『「さみしさ」に負けないための脳科学』(アスコム)の一部を再編集したものです。
『「さみしさ」に負けないための脳科学』(著:中野信子/アスコム)
「そばにいるのに、わかりあえない」「ひとりでいるのがつらい」誰もが抱える「孤独感」の正体を脳科学で解き明かす!
集団をつくり、社会生活を営むわたしたち人類のなかで、さみしい・孤独だと一度たりとも感じたことがない人は、おそらくいないのではないでしょうか。
集団をつくる生物は、孤立すればより危険が増すため、さみしさを感じる機能をデフォルトで備えているはずだからです。
さみしさは人類が生き延びるための本能であり、心の弱さではありません。





