「右にならえ」はストレス。自分の好きな道を楽しく
ずっと東京の自宅で一人暮らしです。遺言書こそ60代で用意しましたが、「終活」と呼べるようなことは一切していません。そもそも、老後に備えてああすべき、80代はこうすべきと、「右にならえ」を強要されるのが私には何よりストレスなのです。
自分のことは自分で決めて、後悔しない。その信念に触れたのは、大学の授業で読んだヘンリー・ジェイムズの『ある貴婦人の肖像』という小説でした。
19世紀の貴族社会が舞台で、ヒロインはひどい男と結婚して不幸のどん底に落ちますが、「彼を選んだのは自分の責任」と言い切り、周囲の困惑をよそに毅然と生きる。その態度や強さに影響を受け、私も周りの意見に流されず、自分の好きな道を目指して生きていこうと心に誓いました。
そうして憧れ続けた字幕翻訳の仕事は、まさに私の天職。高校生のときに「これがやりたい!」と狙ったゴールは、間違っていなかったわけです。
もちろん今後も、仕事の依頼をいただく限りは続けていきたいと思っています。最近は字幕にもAI(人工知能)翻訳を使うケースもありますが、言い回しがどこか不自然だし、微妙な感情のニュアンスを訳すのは難しい。
しかも字幕は、限られた文字数で意味が通るように「縮める」ことが命。人が1秒間に読めるのは3文字程度なので、的確な表現で日本語を縮めていく、職人のような仕事です。