(写真提供:Photo AC)
2025年11月、俳優のトム・クルーズが初めてアカデミー名誉賞を受賞し、話題となりました。そんなトム・クルーズについて、アカデミー賞ウォッチャーのメラニーさんは、「40年の間、進化し続け、常に新しいハードルに挑戦し克服し続ける彼は、私たちに夢と希望を与えてくれる」と語ります。そこで今回は、メラニーさんの著書『トム・クルーズの真髄 40年間トップに立ち続ける理由』から抜粋し、その魅力に迫ります。

前代未聞の宣伝活動――コロナ禍の『テネット』劇場公開

映画による社会貢献の申し子となったトム・クルーズが始めた最近の行動で印象に残ることがある。

それは、コロナ禍がまだ明けない2020年8月、劇場公開に踏み切ったクリストファー・ノーラン新作『テネット』をいち早くロンドンの劇場に見に行き、その様子を自身のSNSで発信し、この作品を劇場で見ることを世界中の映画ファンに推奨したことだ。

クルーズは一切、『テネット』に関与していない。

『テネット』はコロナ禍真っ只中の2020年12月に、配給会社ワーナーブラザースが21年の公開作品を全てストリーミングサービスHBO Maxで劇場公開と同時に配信すると発表し、猛反発したノーランがワーナーブラザースを離れるきっかけになった作品だ。ノーランはそれまでのメジャー作品は全てワーナーブラザースで製作していたが、次作『オッペンハイマー』からユニバーサルに移行する結果になった。

ノーランの反発した理由は、彼が巨大な製作費をかけて作る作品は全て、映画館の大きなスクリーンと良質なサウンドシステムの中で、大勢の観客が一堂に集まって楽しむ体験を前提として作られており、再生をいつでも止められる自宅の環境で、ながら見をするためには作っていない、というものだ。

これは、クルーズがM:Iシリーズを作る時に常に言っていることでもあり、クルーズの行動は、シンプルにノーランの言動を後押しし、観客を劇場に呼ぶためのものだった。