室井 アハハハ、一緒の布団で眠ったりはされなかったんですか?
養老 そういうことはしない猫でしたね。体が大きいので、寝ている時にたまに上に乗られると、もう重くて……。一番重い時は7.5キロありました。
室井 うちで一番大きかった子は、家に迎えた時10キロあったんです。でも様子がおかしいので調べてもらったら、糖尿病だとわかって。5年間、朝晩インスリンを打つうちに、猫自身が注射の意味を理解しているように感じました。まるちゃんは健康でした?
養老 ずっと気づかなかったんですけど、先天的に心臓に問題があったんです。動きが鈍くていつもダラダラしていたのは、たぶん調子が悪かったからなんでしょうね。人間は体調が悪いと病院に行ったりするけど、猫は自分なりに調整する。
室井 猫って、「今の自分」がわかっているんですよね。
養老 人間がわかっていなすぎる。自分がなんでもない時の状態を、把握していないんですよ。みんな、頑張って頑張って生きてるでしょう。そういう生活をしているとわからなくなる。
室井 フフフ、働いて、働いて、働いて、ですからね。
養老 まるを見ていると、「これが生きるってことだよ」と参考になります。気が抜けるというか、あまり頑張らなくてもいいんだと思えてくる。
室井 猫は記憶力もいい気がします。うちにいた後ろ足が1本ない猫は、どうやら野良の頃、男の人に虐待されたらしい。だから男性の来客があると、うわーって逃げていきました。動物は嗅覚も聴覚も人間より優れているし、いろいろな感覚が鋭敏ですよね。
養老 人間が鈍いんですよ。というか、鈍くなってしまった。世の中便利になって、感覚を研ぎ澄ます必要がなくなったんでしょう。
『やっぱり猫 それでも猫』
(著:室井 滋/税込:1870円/中央公論新社)
野良から迎えた猫6匹とのにぎやかな日々を綴った書き下ろしエッセイ。抱腹絶倒エピソードとともに、猫の老いをいかに見届けるか、いくつものヒントに出合える。
室井滋さんと養老孟司さんの対談記事が掲載されている『婦人公論』3月号は好評発売中!






