室内飼いでも狩猟本能を失わない
室井 先生は、まるの前にも猫を飼ってらしたんですか?
養老 チロという雌猫を飼っていました。その猫は、女房が謡いの稽古をしようと先生の謡いをテープで流すと、近くに来て聞いていました。建長寺の托鉢僧が家の前までお経を上げに来ると、走っていく。低い声の日本流の節が好きみたいでした。
チロはとても生活力が強くてね。朝、居間に入るとモグラが走っていたことも。
室井 モグラ!
養老 モグラは首のあたりが丈夫なので、猫に首を噛まれても平気なんです。
室井 えっ! モグラって首があるんですか?
養老 そりゃあ、ありますよ。
室井 すみません。(笑)
養老 家族が嫌がった《みつぎ物》は蛇。咥えて帰ると蛇がチロの口のまわりで渦巻いていて、蚊取り線香みたいになっている。
室井 アハハハ、蛇の蚊取り線香! 狩猟は猫の本能ですものね。
養老 まるは、縁側でリスが走り回っていると捕まえようとしていました。でもある時、家の中から飛び跳ねてリスを捕まえようとして、ガラス戸にぶつかって。凝りて、二度と狩りはしなくなりました。