室井 猫が6匹いた頃、もし大地震が来たりしたら避難所に連れていけないことが不安でした。全員が亡くなった時、もともと外でひどい目にあってきた子が多かったので、地震とか大変な目にあわずに生涯を送れたのはよかったな、と思いました。
養老 それでいいんじゃないですか。
室井 うちの子たちは東日本大震災で揺れた時、みんな「外に出してくれ」といわんばかりに鳴きました。窓を開けてあげたら、バーッと庭に出ていった。身の危険を感じたんでしょうね。
養老 地震や天災に対して、人ができることはあまりない。人間って、そんなに力があるものでも利口でもないので。猫のほうが、よっぽど賢いですよ。
室井 そんな人間が、何が起きてもある程度の幸福感を失わないためには、どうしたらいいんでしょう。
養老 自分が必要なものは自分で調達できる能力を身につけることでしょうね。まず、水とエネルギーと食料。でもそれが調達できる環境にいる人はほとんどいないし、都心では難しい。先のことが心配なら引っ越せばいいけれど、目の前の生活を考えると難しいでしょう。
室井 そうですね。
養老 日本では、社会的な思想が大きく変化するのは関東大震災や安政江戸地震など、必ず災害のあとでした。災害があって、いろんな意味で不幸が起こったあとに、一体どういう社会をつくるのかが大事だということです。
『やっぱり猫 それでも猫』
(著:室井 滋/税込:1870円/中央公論新社)
野良から迎えた猫6匹とのにぎやかな日々を綴った書き下ろしエッセイ。抱腹絶倒エピソードとともに、猫の老いをいかに見届けるか、いくつものヒントに出合える。
室井滋さんと養老孟司さんの対談記事が掲載されている『婦人公論』3月号は好評発売中!






