休止は「停止」ではない
若い頃は、嫌なこともすべて飲み込んで24時間フル回転するのが美徳だと思っていました。けれど、今は「嫌なことは、もうやらない」と決めています。
人生の時間は限られています。自分をすり減らして倒れてしまっては、本当にやりたい経験ができなくなるからです。
部下たちにもよく伝えますが、「戦略的に休むことも、仕事のうち」。
多くの人が誤解していますが、休止は「停止」ではありません。トップスピードで走り続けるエンジンに冷却水を通し、摩耗したパーツを点検する「オーバーホール」の時間です。もし、この時間を惜しんで無理にアクセルを踏み続ければ、いずれエンジンそのものが焼き付き、再起不能なダメージを負ってしまいます。プロフェッショナルであればこそ、パフォーマンスを最大化するために、あえて「止まる勇気」を持たなければなりません。
春、新しい季節だからといって、無理にアクセル全開で走り出す必要はありません。周りがスピードを上げているように見える時期こそ、自分自身の「巡航速度」を見極めることが重要です。
今の自分が何に心地よさを感じ、何に守られているか。その感覚を研ぎ澄ますことこそが、結果として「折れないメンタル」を作っていくものです。
メンタルとは、単なる「気持ち」の問題ではありません。それは、自律神経やホルモンバランスといった、肉体という物理的な土台の上に成立している非常に精緻なシステムです。土台が崩れていれば、どれほどポジティブな思考を積み上げようとしても砂上の楼閣に過ぎません。
少しずつ、出来るところから健やかに生きられる精神作り=土台となる体を整えていきましょう。一朝一夕に強靭なメンタルを手に入れることは難しいかもしれませんが、今日食べるものを選び、今日15分歩き、今日しっかり眠ることは可能です。その「身体へのアプローチ」こそが、外部環境に左右されない、真の意味での自立したメンタルを育てる唯一の近道なのです。

