住宅地の中に整備された公園があった。織田作之助の記念碑と一緒に石上露子の歌碑が建っている。
「彼女の一番有名な歌は別れた恋人のことを思って歌った『小板橋』です」

 ゆきずりのわが小板橋
 しらしらとひと枝のうばら
 いづこより流れか寄りし
 君まつと踏みし夕に
 いひしらず沁みて匂ひき
  
 今はとて思ひ痛みて
 君が名も夢も捨てむと
 なげきつつ夕わたれば
 あゝうばらあともとどめず
 小板橋ひとりゆらめく

 石上露子は昭和初期、美女と謳われた歌人だ。結婚で早くに歌壇を去ってしまったが、その才を惜しむ人は多かったという。

 ――ああ、うばら、あともとどめず。小板橋、ひとりゆらめく。

 感傷的な歌だ。あまり好みではないが、なぜか情景が鮮やかに浮かんだ。