
60歳を過ぎた木綿子は父の介護と引きこもりの娘の世話に日々追われている。不幸ではないが、いろんなものを諦めてきた人生だった。けれど、ひょんなことから知り合った2歳年下の男と出逢う。二人は互いに惹かれていくが……。遠田潤子さんが描く、静謐で過激な大人の恋愛小説。ぜひお楽しみください。
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「記録2」
山際木綿子が来たのに会えなかった。
俺はすっかり落胆しながら、みなでプリンを食べた。甘さ控えめで固めのプリンで、瓶の包装もいかにもおしゃれだった。
「今、こういう手作り感のある昔風のプリンが流行ってるんやって」
瀬良が優人を見守りながら言う。
「霧さんは昔、こういうの食べてたん?」
剣人はあっという間に食べてしまって、物足りないような顔をしている。
「いや、うちの母親は蔵と店が忙しくてお菓子作りなんかする暇がなかった。高校、大学と寮生活してたときは、スーパーやコンビニで安い三つパックのプリンを買って食べてた」
「同じやな」
剣人と瀬良がうなずき、すこし嬉しそうな顔をした。
