「霧さん、頑張りや」
 まさか、もうバレているのか。だが、ムキになって否定したら余計に怪しまれる。
「ああ、頑張るよ。これから燈路まで忙しいからな」
 上手く誤魔化せたのかどうか。ふふっと笑って瀬良は行ってしまった。
 その夜、十二時前になってようやく勇気が出た。連絡が遅くなったこと、不在にしたことへの詫びを綴り、今度来る日がわかったら連絡してほしい。必ず居るようにする、とメールを書いた。最後に蔵の代表番号ではなく、個人スマホの番号を記した。それから、迷いに迷って付け加えた。お待ちしています、と。
 送る前に何度も何度も読み返した。ふいに怖くなってきた。なにが怖いのかわからない。だが、怖くてたまらない。一体、なにを動揺しているのか。落ち着け、と自分に言い聞かせながら送信した。
 すぐに返事が来た。来週の火曜日午後、お伺いしたいのだが、ご都合はいかがでしょうか、とある。すぐさま返信した。お待ちしています、と。
 またすぐに短い返信が来た。承知いたしました。お目にかかるのを楽しみにしています。
 ただの業務メールだ。なのに、こんなにも興奮している。俺はまた落ち着かなくなってきた。自分が壊れていくような気がする。人を好きになるとは、こんなにも怖ろしいことだったのか。
 夢を見てはいけないことくらいわかっている。だが、もう一度だけ、あとすこしだけ。それならいいんじゃないか? あとすこしだけ、すこしだけなんだから――。
 

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