作家・今村翔吾の看板

それでも、今村翔吾事務所の場合、作家・今村翔吾の看板があるため、大胆にリスクを取って新しい事業に挑戦できます。たとえば、新規事業を始めるにあたって、銀行から借り入れをしたのですが、今村翔吾事務所に文筆業という有力な「副業」がなかったら、融資を受けることができなかったかもしれません。

実際に銀行は、私がどういう本を出しているのかを調べるのはもちろん、私の本が書店でどれだけの売場面積を占めているかを写真に撮り、売れ行きも調査していました。さらに、生々しい話ですが、私には、個人保証(連帯保証)の形でかぶっている借金が1億円くらいあります。

それでも、最近は徐々に会社の実績が認められるようになってきて、いわゆる「プロパー融資」も受けられるようになりました。プロパー融資とは、信用保証協会のような第三者の保証をつけず、金融機関がリスクを負って実施する直接融資のことです。これは、借り手が返済不能となった場合、銀行は損失を丸かぶりすることになるので、当然、審査は厳しくなります。いっぽう、借り手にすれば、保証協会をつけた時のように保証料を支払う必要がないため、借入コストの総額を抑えられます。

ですから最近は、銀行側から融資の話があっても、「プロパーでないのならけっこうです」と返事をするようになりました。数年かけて、このステージまで上がってきたわけです。

※本稿は、『書店を守れ!』(祥伝社)の一部を再編集したものです。

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書店を守れ!』(著:今村翔吾/祥伝社)

書店数は2003年には1万3661店だったが、2025年12月時点で7458店である。

どうすれば、書店の廃業を減らすことができるのか。

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