高齢期に差しかかると、固有名詞が咄嗟に出なかったり、話の途中で言い淀んだりすることが増えてくる。これらは誰にでも訪れる「老化現象」。

老化と認知症の境はわからないけれど、たとえば物忘れで失敗する回数や、何かおかしいと感じる頻度が顕著に増えていると思ったら、一度、認知症の検査を受診することをおすすめします。

まずはかかりつけ医でかまわない。軽度認知障害の場合、対策を早く始めることが大切です。

思えば、近年僕は、照ノ富士、武豊、大谷翔平に憧れていました。彼らの活躍のもとは、想像を超えたトレーニングにより積み重ねられた、膨大な時間にあります。彼らは生活の半分以上の時間を練習にあてている。いってみれば寸分の遊びのない生活をしています。その過酷さに尊敬の念が生まれるのです。

記憶には2系統あると言われています。1つは、脳細胞が海馬を経由して、知識・出来事を記憶するもの。もう1つは大脳基底核とよばれる細胞を経由して、1万時間の繰り返しにより習得する筋肉の記憶。これはたとえば歩き方や箸の持ち方など、行為に必要な運動のスキルに関係する、乱暴な言い方をすれば運動による条件反射の習得です。

認知症患者は、筋肉の記憶によって毎日の動作をスムーズに行うことが重要視されている。僕の経験が将来の治療薬の出現に少しでも役立てば幸いです。

僕は舞台出身の俳優。一幕目が開き、二幕目に長い休憩があり、三幕目に終幕を迎えます。どんな芝居でも、終幕の塩梅(あんばい)がその芝居の価値を決めるものです。この稿の塩梅がどうか案じながら終わります。

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