筋トレするシニア(写真はイメージ/写真提供:Photo AC)

3年前に軽度認知障害(MCI)と診断され、Uターンに向けて努力を続ける俳優・山本學さん。2度のがんを経験し、少しずつできないことが増えていく中、「それでも【今日を生ききる】」という思いを胸に一人暮らしを続けています。そこで山本さんが認知症専門医・朝田隆医師との対談をまとめた『老いを生ききる 軽度認知障害になった僕がいま考えていること』より、一部を抜粋して紹介します。

歳をとってみて初めてわかった何もないところで転ぶ理由

【朝田】:老年医学という分野には、「四大悪」といわれるものがあります。その中のひとつが「転倒」。これがすべての始まりです。

転倒して骨折すると、「寝たきり」になったり、外出できなくなったりする。そして、家にこもるようになると、社会性やコミュニケーションの機会を失って「失禁」が固定し、「認知症」が進行する。そんな、《悪い循環》が起きてしまうんです。

【山本】:たった一度の転倒が、いろんなものを崩していく、と。

【朝田】:はい。おおよそ65歳を超えてくると、だいたい2人に1人が、年に1回は転んでしまうようになると老年医学ではいわれています。

【山本】:転ぶというと、筋力の衰えみたいに考える人が多いのでしょうけど、歳をとって転ぶというのは、思っていたのとは少し違うんですよ。

先生は、今おいくつですか?

【朝田】:70歳です。私自身、この数年で2回転んだことがあるんです。それも、石につまずいたとか、スリップしたとかではなくて、こんなところで転ぶのかと驚くぐらい普通の道で転んでしまいました。