平衡感覚が麻痺したように転んでしまった

【山本】:僕もありますよ、80歳を過ぎた頃です。荷物を持って階段を上っていたんですが、何かあったわけでもないのに急にバランスが取れなくなって、尻もちをついてしまった。そのとき、ああ、年寄りはこういうときに転ぶんだと驚いたんです。

普通は、何かに引っかかったとか、つまずいたとかで転ぶんだろうけど、そのときは重心がおかしくなったというか、平衡感覚が麻痺したようになったんですね。

【朝田】:お怪我はなかったですか?

【山本】:尻もちと同時に手もついたんですけど、痛みがあったので診(み)てもらったら、「手首にヒビが入ってますね」って。

【朝田】:それはまだ不幸中の幸いでした。

頭や顔を打って頭部の内出血になってしまう人もいますが、転倒によるダメージが大きいのは大腿骨の骨折、なかでも大腿骨頸部(股関節)の骨折なんです。

大腿骨頸部骨折は、そもそも手術ができなかったり、できてもリハビリがうまくいかなかったりして寝たきりになる人が多く、とても重篤なものです。