空き巣の捜査のじゃまをしたチロ

私が高校生の時の日曜日、家に戻ると、母が、「うちの前のアパートの1階の部屋に空き巣が入ったから、警察が来ている。マツは吠えないから、役に立たなかった」と言った。 

外に出て、私の家の車庫に立つと、空き巣の被害にあった1人暮らしの若いAさんと中年の刑事さんが、アパートの外で私に背中を向けて話し込んでいた。狭い道なので、Aさんの部屋のドアが開いていたので、部屋の中がよく見えた。 

鑑識官がしゃがんで、刷毛で粉をつけ、指紋をとろうとしていて、チロが刷毛にじゃれついていた。棒の先に丸いフワフワがついていて、猫が大好きなカタチと動きをしている。 

鑑識官は「だめだよ」と言い、肘でチロの体を押すが、チロは前足で必死にじゃれようとしている。鑑識官が「コラ!」と言って立ち上がると、チロは、「ニャー」と鳴き、刷毛に向かってジャンプ。鑑識官は、「飼い主さん!この猫、なんとかしてくださいよ!」と叫んだ。 

Aさんは、「お向かいの猫で、よく遊びに来るんです。僕が帰った時、鍵をかけたはずのドアが開いていて、猫がいた。猫がドアを開けたのかと思いましたよ」と、鑑識官に話した。 

鑑識官が、チロのお尻を押して、玄関の外に出そうとすると、チロはジャンプして外の地面に着地。刑事さんが大声を出した。「ああっ!犯人の足跡の上に!猫の足跡が!」。 

私は飼い主として叱られると思い、車庫の脇の塀に身を隠して、見ることした。 

刑事さんは腕組みをして、「この猫は空き巣と一緒に部屋に入ったようだな。ということは、空き巣の顔をしっかり見ている」と、厳しい口調でAさんに言った。 

チロは刑事さんとAさんの間に座りこんで、刑事さんの顔を見上げていた。 

刑事さんはチロの前にしゃがんで、「空き巣の人相はどうだった?」と、問いかけた。 

チロは刑事さんを見つめ、「ウニャア」と鳴き、話したそうだった。

【関連記事】
「乗る飛行機はどこ?!」30年前、ブラジル・リオの空港で涙の爆走。72歳にしてわかった<方向音痴の原因>
「兄ちゃん、カメラマンになりたいのかい?」約50年前、亡き兄に写真を撮らせてくれたのは、伝説のバンド「キャロル」時代の矢沢永吉だった
統合失調症の兄が認知症を発症、途方にくれた私に救世主が現れた。死期が近づいた兄は「おまえは俺の妹だ。可愛いよ」と言った

◆『70代女ひとり、今日も元気に四面楚歌』の連載一覧はこちら
◆『「相撲こそわが人生」スー女の観戦記』の連載一覧はこちら