今につながる医療現場の苦悩と喜びを
『風、薫る』の原案は、田中ひかるさんの『明治のナイチンゲール 大関和物語』(中央公論新社刊)。原案を読み、当時、病人の世話をする看護人は命を引き換えにお金を得る蔑まれる職業だったと知った。
「看護は大変な仕事なのに、今では考えられないような扱いを受けていて驚きました。そういう厳しい状況の中で、大関さんと鈴木さんが看護の仕事を確立した。女性が自分の名前で肩書きを持って働くのは大変な苦労があったはず」と推測する。
医療や病気をめぐり、劇中では、令和とリンクする描写も目立つ。第1週では、りんの住む村にコレラが広がった。隔離される患者、遠巻きに見る村人たち…。りんの幼なじみの虎太郎(小林虎之介)の家族やりんの父も感染し、隔離されてしまう。
「コロナを思い出しながら、スタッフさんと話し合って書きました。当時、街で感染者がどんな目で見られていたのか…。りんたちの状況は、令和に通じる部分もあります。明治時代には感染症が流行りましたし、令和に通じる医療現場の苦悩や喜びを描いていきたい」
「看護」とともに大きなテーマとなっているのが「働く女性」だ。当時、女性は「誰かの妻」になるのが当たり前。女性が自立するための仕事もなかった。婚家を逃げ出したりんは、「誰かの妻」以外の道を求める。直美は恵まれない出自故に結婚に難しさを感じていた。道を外れた2人が、自立の選択肢として選んだのが看護婦だった。『風、薫る』は働く女性の始まりの物語でもあるのだ。
「働いていると苦しいけれど楽しい瞬間がある。苦しいからダメだというわけじゃない。苦しいけれどそれが誰かのためになるし、つながった最後には喜びになることもある。『働く女性は大変』とよく言われますが、つらいだけだったらみんな働いていないはず。りんや直美を通して、働くことの苦労と楽しさを届けたいんです」