メインキャストの中では年上ですし、私が演じる幸村チカは物語の舞台となる法律事務所の所長です。現場ではリーダーらしく率先して動き、アイディアを出そうと心がけていました。情けない話ですが、そういった覚悟みたいなものを抱いたのは、実は今回が初めて。私も年を重ねてきて、落ち着いて周りを見ることができるようになったのかもしれませんね。自分から出演者の皆さんの意見を聞いたり、それをスタッフに伝えたりしていました
撮影が中断されたのは4月の1週目。その時はまだ第1話のオンエア前で、自分も放送を楽しみにしていましたから、「いったん休止になったけれど、頑張ろう」とポジティブな気持ちでした。でもその後、悲しくてやりきれなくなって、すごく落ち込む日もありーー気持ちのアップダウンが激しく、「私って、こんなに落ち込んでしまうことがあるんだ」と自分でもびっくりするほどでした。
医療関係や生活インフラにかかわるお仕事の方は、本当に大変な思いで頑張ってくださっている。俳優の仕事は人の命を救えるわけでもないし、衣食住を支えているわけでもありません。人間にとって必要な仕事の優先順位では、一番最後にくる職業なのかなぁ、この仕事の意味ってなんだろう……と、考え込んでしまう日もありました。
「私たちが働く権利を主張していいのだろうか」という迷いと、「いや、こんな時だからこそエンターテインメントは大事。だから古代から演芸や演劇があるのだ」という気持ちの間を行ったり来たり。なかなか心をコントロールできなくて。
ただ、家族の前で落ち込んだところを見せてしまわないようにとは思いました。こっちは大人ですが、ティーンエイジャーの娘たちだってきっと学校に行けなくてつらいはず。悩んだり落ち込んだりは、お風呂の中や、一人でいる時だけ。でもまぁ、気づかれていたかもしれませんね。(笑)