左膳が謡う声

そして、合戦の際、義元が桶狭間に陣を据えると、どこからともなく左膳が謡う声がした。

「花も千草も。ちりぢりになれば。芭蕉は破れて残りけり」

『名城怪談』(著:田辺青蛙、監修:北川央、イラスト:うめだまりこ/エクスナレッジ)

空は俄かに曇り、雷鳴と共に、たちまち天を突くような大雨が降りはじめた。

雷雨の最中、こんな時にまさか敵軍も攻めては来ないだろう――そう慢心した気持ちがあったからだろうか、数では勝っていたというのに、義元は織田信長の軍勢に敗れ、首を取られてしまった。