脱字と衍字
文章の誤りにはいろいろありますが、本来必要な字が抜け落ちているのは「脱字」です。では逆に、不要な字が入っているのは何というかご存じでしょうか。「衍字」といいます。「衍」という字には、あふれるなどの意味があります。
言葉の中には一見すると衍字に見えるものもあります。例えば自己愛が強すぎる人を「ナルシシスト」といいます。「シが1つ余分なのでは?」と思う人もいるでしょうが、実は間違いではありません。ナルシシストの英語表記は「narcissist」です。ただ、発音のしやすさから実際は「ナルシスト」が優勢かもしれません。
文章ではなく話し言葉ですが、「ら抜き言葉」というものがあります。本来は「見られる・来られる」ですが、「見れる・来れる」のように必要な「ら」がなくなることです。一方で、不要な「さ」が入る「さ入れ言葉」もあります。例えば「知らなさすぎる」は本来「知らなすぎる」ですが、余分な「さ」が入っています。「さ」を入れたほうが丁寧な言い回しだと感じる人もおり、「さ入れ」が文法的に間違った表現であるという認知度は、「ら抜き」よりも低いようです。
「誤字脱字」はよく用いられる表現ですが、「衍字」はなじみが薄いですね。いずれにせよ、誤字も脱字も衍字もない正しい記事を読者に届けるのが、校閲記者の務めです。
※本稿は、『いじわるな日本語 ~校閲の現場から~』(産経新聞出版)の一部を再編集したものです。
『いじわるな日本語 ~校閲の現場から~』(著:産経編集センター校閲部/産経新聞出版)
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