ラブレターを何通も書いたからといって…

現代社会に生きる私たちは、どうしても「書類がある、イコール、効力がある」と考えがちです。

土地の登記簿であれ、契約書であれ、日本という国家が強力な行政力と警察力を持っているからこそ、それは実現します。

しかし中世社会は違うのです。命令を文章化したからといって、その通りになる保証はない。そこには軍事力、交渉力、人間関係、在地勢力との妥協など、さまざまな要素が介在します。

私は一般の方にこのことを説明する時、よくラブレターを例として使います。

例えば、男性が女性に向かって、「私はあなたを愛しています。どうか私の愛情を受け入れてください」と手紙を書いたとします。

しかし、どんなに心を込めて、また何通も何通も手紙を書いたからといって、お目当ての女性がその求愛を受け入れるとは限りません。

女性にその気がなければ、断られて終わり、です。

つまり、「文章が存在すること」と、「その内容が実現すること」は違うのです。