言葉の舞台に喝采を
帝国劇場にはお稲荷さんが祀られていて、休館中は近くの日枝神社に移しているそうです。建て替えまで長いお留守ですね、と感想を言うと、お稲荷さんのお世話をしてきた係の人が「神様にとっては、瞬きする間じゃないですか」とおっしゃった。
その言葉が印象的で、短編集の最後の一編に使わせていただきました。小説は1ヵ月ごとの連載でしたが、書き進めるうちにそれぞれの登場人物やエピソードが、まるで星座のようにつながっていった。
ありし日の帝国劇場では、ロビーの天井にライトが不規則に配置されていました。それは星座をイメージしていたのだという話を執筆後に知り、そこにも不思議な縁を感じたものです。
座席を案内するペン型ライトの淡い光、舞台袖で詩集を広げる役者の横顔、ふかふかの絨毯の踏み心地など、一場面一場面が読者の胸にありありと浮かんでほしいと願っています。
読んでくれたある役者さんからは、「言葉の舞台に喝采を」という素敵な感想をもらって。そんな嬉しい言葉をいただいたら、ますます演劇ファンになって、劇場に通い詰めたくなりますね。
私があまりに「舞台はいい、ミュージカルは素晴らしい」と力説するのに感化され、定年退職した夫も熱心に劇場に通うようになりました。息子夫婦にも「孫の面倒はみてあげるから」とチケットを渡していたら、最近は孫と一緒に観劇に行っているようです。
そうしたささやかな広報活動も含めて、これからも劇場という優しい暗闇に、私は通い続けたいと思っています。






