蘭からの連絡が来て数日後の深夜、父のトイレ介助をして布団に戻ろうとすると、台所には灯りが点いていて醤油のいい匂いがした。
見ると、麻子が料理をしている。切り干し大根の煮物と、蓮根のきんぴらだった。
「麻子、どうしたの?」
「……なにか手伝えることがないかと思って。日持ちのするおかずでも……」
こんな時間に、と言いそうになったが口をつぐんだ。訴えるような眼が私を見つめていた。
「ありがとう。常備菜があると助かるわ。お料理、任せていい?」
「うん」
ほっとした顔で麻子がうなずいた。
「じゃ、ついでにお母さんは糠(ぬか)の手入れをしとこうかな」
糠漬けの容器を冷蔵庫から取り出した。死んだ母から引き継いだ糠で、暑い時期は冷蔵庫に入れている。毎日かき混ぜなければいけないから負担だ。もう止めてしまいたいのだが、父が許してくれない。母が生きていた頃はほとんど食べなかったのに、今になって毎食必ず漬物を出せ、と言うのだ。
糠をかき混ぜてすこし塩を足し、キュウリを漬け込んだ。手を洗って容器を冷蔵庫に戻す様子を麻子が見ていた。
