私は泣きじゃくる麻子を椅子に座らせ、懸命に背中をさすってやった。
「大丈夫。大丈夫よ、麻子」
「お母さん、ごめんなさい。私、全然駄目で……部屋から出てもなんにもできなくて」
「麻子。謝らなくていいの。大丈夫。ゆっくりでいいの。この前はコンロのお掃除ができた。今日はお料理ができたでしょ。ね。無理しなくていい。できることをすこしずつやっていけばいいから」
「お母さん、ごめんなさい。私、もう三十なのに……他の子はみんなちゃんと働いて、結婚して、子供産んでる人もいるのに……」
「他の子のことなんか気にしなくていいの。他人と比べる必要なんてない。麻子は麻子。それだけで充分」
「お母さん、ごめんなさい」
 麻子は声を上げて泣きじゃくった。自分が泣いてはいけないと思いながらも私も涙が溢れてきた。
「……謝らなくていいから。大丈夫。すこしずつ、すこしずつ元気になればいい」
 自分がもっと早く気付いていたら。こんなにもボロボロになるまで、いい子でいようとしていたなんて――。
 無理をしなくていい。一生部屋に引きこもっていてもいい。悪いのはお母さん。だから、お母さんが面倒を見てあげるから――。
 そんなふうに言ってあげられたらどんなに楽だろうか。でも、言えない。私が死んだ後、この子はどうなるのだろう。生きていく力を取り戻す手伝いをしなければならない。それが親の務めなのだから。
 

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