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毎日、霧の「記録」を読む。同じ部分を何度も何度も、霧の書いたことを一言一句憶えていて暗唱できるほどだ。そして、霧の苦しみを共有する。
例えば、唐突に出てくる「雨彦」のことだ。霧から聞かされてはいたが、彼がどれほど苦しんできたかが理解できたような気がする。
霧の罪の意識とは心の底から浮かび上がってくるものではなかった。普段から五感に紛れ込んで隙あらば汚染してくる。眼や耳や鼻、肌で感じるものなのだ。
空を飛ぶ白鳥を思い浮かべた。霧は汚染から逃れ、清められて飛んで行ったのだと思いたい。
父の見舞いに行く。入院している父はすこしずつ確実に死に近づいていた。
私は酸素マスクを着けて小さく干涸らびた父を見下ろしながら、ただこれからの段取りのことだけを考えている。哀しみの気持ちなどすこしも起こらない。
父はずいぶん霧に酷いことを言った。霧の誠実と礼儀に傲慢と非礼で答えたのだった。父を許せないでいるのはそのときのこともある。
