時間を無駄にすることに罪悪感を覚える

長男は13歳、次男は11歳です。長男は昨年アメリカの学校に留学したのですが、今回のことでまさかの一時帰国に。留学前、彼は反抗期に入っていて、私に向かって「うぜえ」「うるせえ」と口答えばかりだったから、「どうぞ、どうぞ」という感じで送り出しました。

それが、すっかり素直ないい子になって帰ってきたんです。「人から何かしてもらったら『ありがとう』って言わないといけないんだよ」と下の子に諭しているのを聞いて、もうびっくり。次男はすかさず、「どの口が言ってんだよ!」って言い返していましたが。

長男のもともとの性格は、パパ譲りでもの静か。そんな子が、「また家族と暮らすことになるのなら、あんなに怖がる必要はなかったなあ」と渡米当初をしみじみ振り返るのを聞くと、12歳にとってはさぞ大変な経験だったろうと胸がキュンとします。

一方、次男の性格は私そっくりで落ち着きがなくうるさい。似たもの同士ですから、ずっと一緒にいると鬱陶しいったらないですよ。

兄弟は仲が良いので、一緒にバドミントンをしたり、同じマンションの友達とオンラインゲームをしたり。夫は家から一歩も出なくても大丈夫な人。外出自粛に一番痛手を受けて腐っていたのは、私でした。

三度の食事作りもだんだんしんどくなってきて。朝から、「僕はフレンチトースト」「俺はパンケーキ」とそれぞれ違うことを言うから、「うちはレストランじゃないんだよ」と(笑)。兄弟でオンライン授業の時間が違って起きる時間もばらばらになったので、朝食は各自勝手に食べてもらうことにしました。

私はせっかちで、時間を無駄にすることに罪悪感を覚えるタイプ。幼い頃から親が決めた分刻みのスケジュールに従って過ごしてきて、「ヴァイオリンの練習をしないと殺される!」なんて思ってた。そのせいか、大人になった今も、美容院で髪を切ってもらっていても、同時にお弁当を食べながら仕事の資料を読んだりします。座っているだけで何もしないなんて、時間の無駄だと感じてしまうんです。

高嶋さんのインタビューが掲載されている『婦人公論』7月14日号

そんな私が、このコロナ禍で、一日中ベッドでゴロゴロとか、3食すべてウーバーイーツで調達とか、初めて経験することの連続。以前なら、自分を責めていたんじゃないかと思います。でも今回ばかりは、自分の力でどうにかできるわけではない。最近は、いい意味であきらめがついて、「何もしないでいることって、こんなに楽なんだ……」とびっくりしています。

ある時、仲良しのママ友に電話で「ずっと家から出られず死んじゃいそう」とグチをこぼしたことがあります。そしたら、「何を言ってんの。あたしたち、いつもこうよ」「母親って、毎日家で子どもが帰って来るのを待つものなのよ」と言われて。ああ、そうかと。

家の中でじっとしているのが苦手な私にとって、仕事で出かけられることがどんなにありがたいことだったか。こんな時にグチるのはわがままだと気づきました。自粛生活を体験しなかったら、まったく思い至らなかったと思います。