「ええ。霧さんも本当に酷いことをします。私だって、霧さんに出会わなければなにかを期待することなんてなかった」
「君は今、なにかを期待しているのか?」
「しています。したくないのにしてしまうんです。そうさせたのは霧さんです」
 それを聞くと霧がまた黙った。しばらくじっとしていたが、ゆっくりと身体を起こす。それから、私の腕をぐいっと引いて起き上がらせた。慌てて私はたるんだ上半身に薄い布団を巻き付けて隠そうとしたが、霧に制止された。
 二人でベッドの上で向かい合う格好になった。
「こんなことを言うつもりじゃなかった。一生誰にも言うつもりじゃなかった。言ってはいけない。いけないとわかっているのに……」
 霧が混乱していた。呆然と眼を見開き、グレイの髪を何度も掻き上げる。
「俺は一生一人でいるべき人間だ。もう二度と誰かを望んじゃいけない。大げさに言ってるんじゃない。本当なんだ。なのに……」
 霧が喉の奥でかすかに呻いた。
 怖ろしい、と思った。私はそんな霧に期待している。だから怖ろしくてたまらない。
 霧が髪からゆっくりと手を下ろした。そのままじっとしている。やがて、静かな眼で私をじっと見つめた。