中でも青峰の記憶に深く刻み込まれているのは、サカキという男だ。良い意味でも、悪い意味でも。
打てば響くというタイプの人間で、どんなゲームの話題を振っても話が弾む。マニア中のマニアだと認識していた。
ところがある日、青峰はサカキの先輩の口から真相を知らされた。サカキはパソコンで出来る成人向けのゲームが専門で、それ以外のものは、ネットで得た知識だけで話していたのだ。つまり、一分たりともプレイしたことがない、と。
青峰にとっては信じ難い存在だった。ゲームはあくまでも自分で遊ぶものであって、時間と労力を投下した経験と記憶が全てだ。その記憶に、知識の積み上げだけで並ばれてしまうのは――。
青峰は当時の気持ちを噛み締める。
――……そう、不愉快だった。
サカキはいつもひょうひょうとして、サークルの空気を明るくしていた。いるだけで話が弾むのだから、それも当然だった。
青峰は逆だった。相手と好きなゲームが一致しても、小さなこだわりの部分で対立して、喧嘩腰になってしまう。自分の好きなものを否定されて落ち込むこともしばしばあった。
サークルで四年揉まれるうち、本当に否定されたくない作品は人前に出さないことを覚えた。潰す、潰されるの感覚がない、心地いいレベルの議論のやり方を覚えた。丸くなった、と言えばそれまでだけど、おかげで社会人になってから築いた今のオフ会グループに馴染むことが出来ている。
青峰は、自分の現状に満足している。
大学卒業後、システムエンジニアになって十年目。決して優秀な社員ではないかもしれないが、そこそこ責任のある仕事を任され、慕ってくれる後輩がいる。好きなゲームをやる時間も作れ、今回は有給まで取ることが出来た。ゲームの話をする友人までいる。
これ以上、何を望むことがあるだろう?
