生き抜くことを手伝う

だから僕は外来で患者さんにハッパをかけます。

歩けなくなったら死んじゃうよ。でもがんばって歩いていれば死ぬまで歩けますよ。歩いているうちは死なないよ。死ぬ前日まで歩きましょう。歩いて棺桶に入りましょう。

『死ぬまで生きる: 穏やかな死に医療はいらない』(著:萬田緑平/河出書房新社)

「死ぬ」「死ぬ」の連発ですが、患者さんのリアルな恐怖はそんなことよりトイレに行けなくなること。目標は亡くなる前日までトイレに行くこと!と言うと、ほとんどの患者さんは目を輝かせます。「そんなことが可能なんだ!」と。

診療所の玄関から診察室までのゆったりと広い廊下は、貸し切りの萬田道場です。外来は1人1時間とたっぷりなので、他の患者さんとかち合うことはありません。僕は患者さんを出迎えながら、診察室に入るまでの歩く様子を観察します。皆さん、「緊張する〜」と言いながら、いいところを見せようと歩く。

「かっこいいなあ。何かいいことあった?」

「ちょっとふらふらしてるよ。トイレが間に合わないよ」

「あ〜あ、それじゃあ棺桶の縁を低くしないと棺桶を跨げないよ」

僕はほめたり、悔しがらせたり、笑わせたり。人生の終末期を上手に生きてもらうためのパーソナルトレーナーとして、いろんな手を駆使して患者さんのやる気を刺激して、生き抜くことを手伝うのです。