棺桶に歩いて入る歩き方指導

歩けるかどうかの評価は歩くスピードや歩幅、ふらつき具合などを見極めますが、スピードはよくても、ふらつきが気になったりと、どれが歩ける状態か、その評価は難しいものです。

僕は、椅子から腕の力を使わずに立つことを評価の基準にしています。歩けなくなる前に立てなくなるからです。

(写真提供:Photo AC)

逆に言えば立てれば、歩けます。

テーブルや椅子の座面に手をついたり杖を使ったりして、腕の力で立ち上がるのはだめ。両手を膝にのせて、エイッと突っ張った反動で立つのもだめ。足の力のみで立ち上がってもらいます。

患者さんやご家族にそのコツを教えると、結構立ち上がれるのです。この立ち上がりをがんばれるうちは、まだまだ歩けます。

歩き方は“大股でゆっくり”が基本です。ポイントは片足になっている時間を長くすることで、ふらつきそうになって壁に手をつくときも手は壁に触るだけ。介護者につかまりそうになっても触るだけ。腕の力ではなくふらつきを防ぐ体幹の筋力を使って、身体をキープしてもらいます。体幹は頭と両手・両足を除いた胴体部分のことで、腹筋や背筋などの大きな筋肉と肩甲骨や股関節周辺の小さな筋肉もすべて体幹のパーツです。

片足の着地時間が短くちょこちょこ歩きしかできない人は、当たり前のように杖を使ったり、危ないからと介護者に両脇を支えられたりして歩いてきます。片足で立つことができなくなると歩けなくなります。だからちょこちょこ歩きしかできなくなると、それは歩けなくなる一歩手前の段階です。でも身体を支えて片足をあげてもらうと、できる患者さんもいます。そういう人は足の筋力がないのではなく、ちょこちょこ歩きの原因はやっぱり身体のふらつきをコントロールする体幹の筋力の問題です。

転倒しないように家族や介護者が支えてしまっては、体幹の筋力は落ちる一方です。腕は使わず、なるべく体幹の筋力を使うことを繰り返し指導します。