床にポタポタ便を落として……
私はイギリスで訪問看護と失禁看護という分野について学び、帰国後30年以上、排泄ケアの専門家として過ごしてきました。そんな私でも実母の介護は思うようにいかず、予想以上の大変さを味わったのです。
東京で仕事をしていた私が、高知市内の実家で97歳の母と暮らし始めたのは6年前のこと。それまで母は自らの意思で高齢者施設に入居していました。
私は自分が訪問看護に携わっているのに父が病院で亡くなったので、せめて母は在宅で看取りたいと思い、母を自宅に戻し、東京との二拠点生活で介護をしようと決意したのです。
母は要介護1で、認知症もなく頭はしっかりしていました。ところが一緒に暮らし始めると、家中に漂うひどい悪臭に悩まされるように。高齢による切迫性尿失禁と腹圧性尿失禁の混合型で、尿失禁を繰り返していたのです。慢性膀胱炎のせいで尿の臭いもきつくなっていました。
一番の問題は、母が自分で用意したボロ布を紙おむつの中に入れ、汚れるとトイレの水で洗って庭に干していたことです。生乾きの布が強烈に臭うので、私が市販の尿取りパッドを使おうと促しても、「もったいない」「自分できちんと処理しているし、臭いは気にならない」の一点張り。
母は戦後に中国大陸から私の姉たちを連れて引き揚げ、モノのない大変な時代を生き抜いた。だから「戦争を知らない今の人たちは何でも捨てろと言う。そんな贅沢はできない」と言って譲りません。
なんとか布を取り上げたら、今度は新聞紙を船形に折っておむつに入れてパッド代わりにするのです。さらに使用済みの紙をその辺に放っておくので、また悪臭の元に。