しかも専門知識を持った娘から「こうしたほうがいい」などと指図されたり、「臭い」と言われたりして、プライドを傷つけられたことでしょう。私が何を提案しても、「外で偉そうにしていても、あんたは私の娘でしかないんだからね」と突っぱねる。毎日、機嫌を取るのにひと苦労でした。

当時、母は1階、私は2階の部屋で寝起きしていました。臭気は下から上ってきます。朝起きて自分の部屋のドアを開けると、まず悪臭が鼻をつく。私もさすがに、「ああ、今日も朝からこの臭いか」と多少うんざりした気持ちになります。

でも極力顔には出さないようにして、普通に「おはよう」と母の部屋に入る。ところが母は私のわずかな表情の変化を目ざとく捉え、「なぜ朝からそんなイヤな顔をしているの。あんたの勝手で私はこの家に帰ってきたんだから、そんな顔をされるぐらいなら施設に戻る」……。

もちろん私だってカチンとくる。介護ストレスとは、そうした瞬間、瞬間の積み重ねですね。

私はプロなので、腹を立てながらもどこか冷静な部分もあって。そういう時は「お母さんが出ていくぐらいなら、私が家を出るから」と言って外出することにしていました。

マラソンが趣味の私は一走りして、頭を冷やして帰ってくる。そんなことの繰り返しでした。怒りが湧き上がった時はひとまずその場を離れ、外の空気を吸うのは効果的です。

 

後編「悪循環が好循環に変わったきっかけは…」につづく

【関連記事】
<後編はこちら>排泄ケアの専門家が実母の介護で実感した、尊厳を傷つけられる苦しみ。解決策につなげるための「排便・排尿日誌」の書き方
駒村多恵「母の同居介護を19年。キャスターの仕事と介護、どうしたら両立できるか考えて。今まで続けてこられた理由は」
「おむつなんかイヤ。死んだほうがまし」「『トイレ!』が最期の言葉になった」在宅緩和ケア医が語る、患者の排泄問題