精神的に行き詰まっていた

学校での光の居場所はますます美術部の部室と保健室になっていった。新しい級友とも新たな人間関係を結ぶことはできず、自分から孤立を選び、また周囲からも積極的に関わってくる生徒はほとんどいない状態になっていった。

夏休みが終わり、秋になった。学校には毎日登校し、授業はきちんと受けたので成績が落ちることはなかった。

『性別違和に生まれて-父と子で綴った23年』(著:松永正訓/中央公論新社)

しかし時間を経るごとに光は自分の居場所をますます小さくしていた。朝、学校に行っても教室に入るのがイヤだった。イヤというのは、授業がイヤとか登校を拒否するという意味ではなく、クラスメートと顔を合わせても何をどう話したらいいか分からず、みんなと会うことがイヤだということだ。

そのため、学校に着くと、始業ベルが鳴る直前まで敷地の周囲をぐるぐると歩いて過ごした。光は、精神的に完全に行き詰まっていた。