「高校・大学の頃は根拠のない自信にあふれていて、〈大変そうだな、困ったな〉という事態に陥っても、〈まあ何とかなるでしょう〉という精神で先へ進んでこられました」

記憶に残る音を持ち帰ってほしい

ここまでお話ししておわかりのように(笑)、私は本当にのんびりと能天気で、楽観的な性格です。

特に高校・大学の頃は根拠のない自信にあふれていて、「大変そうだな、困ったな」という事態に陥っても、「まあ何とかなるでしょう」という精神で先へ進んでこられました。目の前のことに精一杯取り組んでこられたのは、きっと幸運なことだったと思います。

ただコロナ禍の数年間は、一流プロからアマチュアまで等しく、音楽家は活動の場が制限されました。私自身、目標にしていた国際コンクールに出られなかったり、せっかくお声がけいただいた演奏会が中止になってしまったり。

それが20代後半という、ピアニストが世に出るための大切な時期と重なったため、いくら楽天家の私でも、将来が不安になり、この先の身の振り方に悩むこともありました。

ベルギーで開催されるエリザベートコンクールはその時期に参加が叶わず、昨年は満を持して挑んだ大会でした。ファイナリストになると、新作の楽譜が渡され、自分一人の力で仕上げなければならないという特徴的な課題があります。

その間は1週間宿舎にこもり、インターネットも遮断された生活。スマートフォンが使えないというだけで、こんなにも時間が余り、生活が静かになるのか、と衝撃を受けました。やることといえば練習か食事、あとはファイナリスト同士でおしゃべりすることが唯一の娯楽という感じでした。