けれども「時間が余る」ということは、人生に余白が生まれることなのですよね。その余白を埋めようとして心が動き、それが芸術を生み出す源になるのではないか。夜一人で庭へ出てぼーっとしていると、木の枝や草の揺れる音がしたり、星がきれいだったり、感覚が研ぎ澄まされていくのを感じました。

普段はあらゆる情報に囲まれているため、自分で何かを生み出したつもりでも、それは誰かの真似だったり、どこかで聴いたものが頭に甦っていたりするだけかもしれません。インプットがなくなった状態で、自分から何がアウトプットされるのか。そう考えた時、つねに内面が豊かであることが大切なのだと気づきました。

ずっとピアノの前に座っているのではなく、趣味の美術館巡りや読書の時間も大切にしながら感性を育てていきたいというのが、今の私の願いです。

ショパンコンクールの入賞インタビューでもお話ししたように、「現実の喧騒からひととき離れて、特別な瞬間をお届けできるピアニストでありたい」と考えています。

クラシックの演奏会というと、「自分は詳しくない」「知らない曲が多いから」と敬遠してしまう方もいらっしゃるかもしれません。それでも演奏家としては、まずは聴きに来ていただけるだけで幸せです。気持ち良ければ、眠っていただいても構いません(笑)。

「あの曲のあの音が好きだったな」と記憶に残る瞬間をお持ち帰りいただけるように、これからも演奏を磨いていきたいと思っています。

 

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