不思議の国をイメージした瑞穂屋

西洋化の象徴のひとつが、歌舞伎俳優の坂東彌十郎さんが演じている清水卯三郎が経営する商店「瑞穂屋」。卯三郎は実在の人物で、パリ万国博覧会に参加し、茶屋を出店した商人。英語やオランダ語にも通じ、東京・日本橋で、欧米から持ち帰った品を扱ったのが瑞穂屋だ。

『風、薫る』場面写真(瑞穂屋外観)
(『風、薫る』/(c)NHK)

店頭には大きなウサギのオブジェが置かれている。脚本には「なぞのオブジェ」としか書いていなかったが、「卯三郎は、りんを新しい世界に導く人。洋装で登場しますし、卯の字が入っているので不思議の国のアリスのウサギのイメージです。そこから瑞穂屋を不思議の国、ワンダーランドのようにしようと設定して、オブジェはウサギになりました」と川名さん。店の奥にある卯三郎の社長室は、ウサギの巣穴をイメージ。狭い空間に潜り込むような雰囲気を出した。

『風、薫る』場面写真(卯三郎の社長室)
(『風、薫る』/(c)NHK)

洋書に打ち掛け、ランプ、ハイヒール、西洋の甲冑…。店内には欧米から仕入れた様々な商品があふれる。「世界中からいろいろなモノが集まったカオスな空間」をイメージした。

店内は全体的に照明が抑えられて落ち着いた空間だが、窓からさしこむ光がレトロな雰囲気を醸し出す。実は、入口や中庭に面した窓には、『風、薫る』のために大道具スタッフが日本の伝統的な技法を実際に再現して作った「結霜ガラス」を使用。

明治時代から昭和初期にかけて流行したガラスで、磨りガラスの上ににかわを塗り付け熱することで、霜が降りたような模様が生まれるのが特徴だ。「暗い空間にガラスを通して光を入れることで、明るさをより強く感じさせることができるんです。その効果を最大限に生かすため空間には高窓を多く設けました。照明さんは明かりの入れ方に苦労しながらも、楽しんでやってくれました」と川名さん。

『風、薫る』場面写真(片岡 鶴太郎さん)
(『風、薫る』/(c)NHK)