鹿鳴館の工夫

劇中で最も豪華なセットとなったのが「鹿鳴館」だ。明治16年(1883年)、政府の欧化政策の一環として建てられた西洋建築で、政府や貴族の社交場として使われた。劇中では、第5回で、陸軍卿・大山巌と捨松の結婚披露パーティーの場として初登場した。

鹿鳴館は旧薩摩藩の屋敷跡に建てられ、黒門はそのまま鹿鳴館の正門として使用された。その黒門に似せた門をオープンセットに配置し撮影した映像に、中庭や外観のCG映像を組み合わせ、当時の鹿鳴館の姿を再現した。

『風、薫る』場面写真(多部未華子さん、髙嶋政宏さん)
(『風、薫る』/(c)NHK)

鹿鳴館の建築家は、イギリス人のジョサイア・コンドル。美術チームで、東京都内に残るコンドル建築「旧岩崎邸」などを見学し、「鹿鳴館らしさ」を追求した。

デザイナーの上田規子さんは「資料はたくさん残っていますが、スタジオにそのままのサイズをデザインで作るには無理がある。西洋らしい重厚さは大事にしつつ、限られたスタジオのなかでいかに広がりを感じさせるか工夫しました」と明かす。NHKのドラマではこれまで何度も鹿鳴館のセットが作られてきた。それらのセットパーツを一部再利用しているという。

『風、薫る』場面写真(鹿鳴館のカーテン)
(『風、薫る』/(c)NHK)

鹿鳴館といえばダンスシーン。空間を仕切らず開口を作ることで広く豪華に見えると考えた。舞踏室と廊下の間には本来は扉があるが、カーテンにして視線の抜けを作り、開放感を演出。一方で舞踏室から廊下にかけての空間を一部壁で仕切ることによって、セット全体を1階のエントランスとして飾り替えた。制限のあるなかで試行錯誤して作り上げたという。

撮影には実際に鹿鳴館で提供されていたパイやケーキなどのお菓子を飾った。大きな花やマントルピースの上の鏡、大きな姿見は史実の通り。上田さんは「鏡を置くといろいろなものが映り込んでしまうので、映り込みを防ぐためにメイドさんに鏡を拭いてもらったり、前に立ってもらったりしました」と説明する。

『風、薫る』場面写真(鹿鳴館のお菓子)
(『風、薫る』/(c)NHK)