信長がやってしまった

ところが、1572年、信長がやってしまった。

義昭の勝手な行動に堪りかねたのか、自分の正当性を示すための印象操作だったのか、義昭への苦言を17項目にもわたって突きつけたのである。

『世界を変えた「凡ミス」図鑑:昔の人たち、やらかしすぎ!』(著:近藤仁美/三笠書房)

しかも、義昭本人だけでなく、有力な公家や大名にも送った。現代でたとえていえば、他人を叱責するとき、やたらとCCをたくさん入れてメールしてくる人のようなものだ。

相手を思った意見なら直接一対一で言えばいいのに、なぜわざわざ周りに知らせるのか。それは、たいていの場合、周囲を味方につけるとともに、槍玉に上がっている人間に恥をかかせたいからだ。

ちなみに、17項目の内容は、「もらった名馬を売って金にした」だの「自分の蓄えばかりして家臣を飢えさせる」だの、セコさと不誠実さが強調されたものだった。

さて、義昭といえば、自力で軍を動かせないのに「将軍になりたい」と言うほどの人物である。だから、ある程度、権威や体面を気にするタイプだと思う。そんな人がこんなことを言われたら、「恥をかかされた!」と怒るに違いない。