今や生成AIは私たちの日常に溶け込み、ビジネスから創作活動まで、あらゆる場面で活用されています。そんな中、1983年からAIの胎動を感じてきたAI専門の研究者である黒川伊保子さんは「AIは、人間の感情を煽る感情ブースター。翻弄されずに乗りこなすには、ちょっとしたセンスがいる」と語ります。そこで今回は黒川さんの著書『AIのトリセツ』より一部を抜粋し、子どもにも伝えたい人工知能との付き合い方をお届けします。
AIは壁打ちに使う
歌人の俵万智さんは、AIに上の句を入れて遊ぶことがあると言う。
あるとき「一人称あまり使わぬ日本語に」とお題を出してみたら、あまたの回答の中の一つが、ふと目に留まった――「君の心を隠しているか」。とはいえ、そのまま採用することはない。「短歌は、ことばを生み出す過程を味わう営み。作品は、その副産物に過ぎない」と俵さんは言い切る。体裁のいい成果物をAIで取り繕うことに、作者としては何ら意味がないのである。「ただ、壁打ちにはなりますね」と、俵さんはうなずいた。
壁打ち、ということばを、ソフトバンクの孫正義氏も使っていたと記憶している。「AIを壁打ちに使って、千の特許を考案した」と。
たしかに、このことばは、AIと付き合う際の重要なキーワードだ。壁打ちをしながら、自分の球筋を読み解き、新たな変化球を生み出す。自分の中にあるタネで千の花を咲かせるために使う。