人類は、大変なジレンマを抱えることになった

私も、わが社のネーミングデザイナーも、基本AIを使わずにネーミング案を考案する。中盤で手を借りることもあるけれど、壁打ちに使うだけだ。理由は、自分でことばを生み出さないと、最後の勘が働かないからである。そして、なにより、新しいことばを考え出すのが好きなのだ。脳の中で、ことばが成ったときの喜び――これは、何にも代えがたい。

そう考えてみると、AI時代は、自分の仕事を好きでできる人じゃないと厳しいのかもしれない。AIで済む仕事を、手ずからする……嫌々するのなら、こんなモチベーションの上がらない仕事ってあるだろうか。

『AIのトリセツ』(著:黒川伊保子/扶桑社)

それでも、経営者は、AIがあっという間に出せる成果を、わざわざコストをかけて、若手にさせてやる必要がある。しかも、無駄と失敗を祝福しながら。そうしないと、明日の勘が育たないから。

AIは、人類に“勘どころ”を丸投げにしたくせに、勘を手に入れる現場を奪いつつある。人類は、大変なジレンマを抱えることになったのである。